YUMERI〜女のコにはユメとキボウがあるのだ!〜
本は返品制度で問屋に返す事が出来る。だから色々取り寄せて、売れなければ返し、また新しい本を取り寄せる。最近は本の回転が早い。流行り廃りが激しい。文庫本やコミックが主流で文芸書はなかなか売れない。漫画喫茶や漫画レンタル、古本屋で買う人もいるだろう。いや、今は電子書籍がある。携帯電話でダウンロードしていつでもどこでも読める。出版業界を取り巻く情勢は限りなく厳しい。
何故こんな事を希望梨が知っているのか。単純明快、父が契約している出版社の人から色々聞けるからだ。父はタゴちゃんの愛称で親しまれる作家となり、旅行記を何冊か出版している。「タゴちゃん関西を巡る旅」…こんな感じ。BOOKSケイにはもちろん田吾郎の本が全て揃っている。というか田吾郎コーナーがある。一つの棚全て父の作品で埋まっている。タゴちゃん→タコを連想するのか、父の本の表紙にはタコが擬人化された(顔は田吾郎)が描かれている。
今父は取材旅行に出掛けている。母は手芸サークルに出掛けていて、もうそろそろ帰宅するだろう。
買ってくれそうな気配のある客は居ず、希望梨はもっぱらスリップの整理をしていた。時々防犯カメラの映像に目を向ける事は忘れずに。
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