イケメン様の隠し事
私生活
淳Side

俺の名前は鬼森 淳(キモリ ジュン)。
一応女ね。


母さんとアパートに2人暮らし。
親父は別な女とよろしくやってんだと…


ろくでもない父親とは正反対で、せっせと俺らの生活のために働いてくれる母さん。
だから俺もバイトをしている。
家賃とかは2人で出しあう。


俺が働いているのは繁華街にある洋風レストラン。
俺と仲のいい友達が入ってから売上げは急上昇、
客も前より増えたんだと。



それより皆が知りたいのはあれだよね、
俺がなんで男の格好しているか。


そんなの簡単な話。
趣味だよ、趣味。

あ、俺じゃなくてね?
母さん。


小さい頃は可愛いー、なーんて言われてて、小学校中学年ぐらいで長い髪をバッサリ切ったら母さんがいきなり、『イケメン!』て言い出したのがきっかけ。


中学からはだんだんと今現在の俺への形状に向かっていってた。
変な話だよなー。
高校に入ったら俺、男用の制服買わされたし。


ま、男でいるのも悪くない。
俺がイケメンだから女子に囲まれる。
ちなみに身長172センチ。
女にしてはでかい方だ。

母さんがスタイル良いからね。
俺はそれを受け継げたって思うと嬉しいよ。
顔は…………誰似だろうね?
ま、知ったこっちゃないけど。



俺には小さい頃からの幼馴染がいる。
小野 貴也(オノ タカヤ)。
こいつが俺と同じレストランで働いている友達。
それと、俺の秘密も知っている。
で、俺の隣の住民。
こいつも母親と2人暮らし。
でも別に離婚とかじゃなくて、親父さんは海外で立派に働いてるんだと。



「じゃ、母さん、行ってくるね」

「はーいっ今日もイケメンねー!きゃぁー!」

まったく、変な人だ…
頭の上からハートいっぱい出てるよw


「おっ淳じゃん!はよー!」

「朝からうっさい」

「ノリ悪!!いつもだけどさ!」

こいつは母さんの趣味に何故か同意して俺を男にしようとするし、男として見てる。
いっそ男に生まれてくればよかった…

「あっ淳!今日合コン…」

「行かねぇよ」

「何で!?お前が来れば俺ん時より女の子たくさんくんだよー!!」

「そんなん当たり前だろ。俺かっこいいもん。」

「うわ、ちょームカツクわ!俺より身長ちっせーのに…」

貴也は身長178センチ。
俺より遥かにでかいし、顔もいい。
ま、俺の方がトータルは上だけどー!!


学校に来ると女子のお出迎え。

『きゃー!!淳くんだよ!!』

『たかくん今日もカッコイイ!!』


皆がキャーピーキャーピー騒ぐ。
嬉しいけど、告られるとなると大変なんだよな…

「淳先輩!!」

「ん、なに…??」

最高の笑顔で聞いてあげる。

「きっ今日の放課後、体育館裏で待っているので来てください!!」

赤面でペコペコしながら言う彼女は、それだけ伝えて走って去って行った。


「あーぁ…お前も大変だねー。女子なのに女殺しの顔しちゃってさぁ…その顔俺にくれよ!」

「アホかお前。あ、ゴメン、アホか。」

「は、うっさ!」

まぁ、こんなの日常茶飯事…
そろそろ女子を振るのにも慣れてきた。


1時間目の授業は屋上でサボった。
寝ていると屋上の扉が開く音。
キィ…………


「あ…淳?」

声をかけてきたのはこれまた校内で美女だと噂になっている原石 優(ハライシ ユウ)だ。

俺と同じクラスで、貴也のことが好きらしい。
で、俺は貴也と仲がいいから相談相手ってわけ。
ちなみに貴也は別クラスな。


「お前、サボリいいのかよ…」

「それは淳も同じじゃない?」

クスクスと笑う優。
近くで見るとホントに美人だけど…何で貴也なんだ…

こいつは俺が女だってことは知らない。
だがたまに疑いの目を向けてくる。
女の勘てまじで当たんのかな…
怖い怖い。

「あ、ちょっと淳!今日貴也合コンに行くらしいじゃない!」

「知ってんのか。だいじょぶだって。たぶんあいつお前のこと好きだよ?さすが校内1位美女〜」

「そうなの?そんな素振り見せないから全然分からないわっ」

「貴也を観察してて、時々気が付くとお前のこと見てる。よかったな」

早くくっつけばいいのに。
ったくじれったい。
ま、アホ貴也ではそううまくいかねえのか…納得。





昼。
俺は弁当を作ってこない。
最初は購買で買ってたんだけど、女子からの差し入れが多すぎてそれを昼飯にすることにした。

「淳ー!今日はあたしが作ったお弁当食べてね♡」

「何言ってんのよー!今日はあたしでしょ!」


はぁ…食べろって強制されてるようなもんだな…
嬉しいけど多すぎてやばい…


「皆のちょっとずつ貰うよ。だから喧嘩しないで?」

少し困った上目遣いの可愛い顔で言ってあげるのがコツ。

「淳可愛いー!!うん!喧嘩しなーい♡」

はぁ…で、ここで必ず俺のところに割り込んでくるのが

「俺にも弁当くれー!!」

俺の方が上だけど女子に人気の貴也。

「たかくんはあたしがあーんしてあげるー♡」

「まじか!さんきゅー!」

まっまく、ほんとにアホだな。
自分の気持ちに気付いてないのか?
俺はチラッと優に目で合図をした。


「た、貴也!きっ今日は、あたしと食べない?」

「え……」

皆がざわつく。
それもそうだ。
高嶺の花と言われる優が貴也を誘ってんだから。

「という訳で、今日は女子全員俺にしかあーんしないってことで♡」

いたずらに笑う俺。
それにキャーキャーいって群がってくる女子たち。

『淳!あーん!♡』

「うおっあ、あーん」

ははははは
俺がここまでしてやったんだ!
きちんと結果残せよなぁ!!


「どうしたんだよいきなり」

「何だっていいじゃない!っていうか鈍すぎなのよバカ。」

「って言われてもねー…」

「早く食べるわよ…」

「俺弁当ねーよ??」

「…………………はぁ。あたしのあげるわよ!」

「おっさんきゅー」

「……貴也って、好きな女の子とか…いるの?」

「んぁ?女子は皆好き…べほ!」

「聞かなきゃ良かった!」

「殴ることねーだろ!?はぁ…んでも、特別な子はちゃんといるんだぜー??」

「えっ……そうなんだ………誰よ…?」

「教えてあげませーん」

「はぁ!?んもー!あんたなんかその子に振られちゃえばいいのよ!!」


あーぁ、教室から丸見えw


しばらくすると優がしょんぼりしながら帰ってきた。


「貴也は?」

「トイレ」

「ふーん。んで、何でそんな沈んでるわけ?」

「貴也はちゃんと特別な子いるんだって…」

「へー。って、誰!?」

「教えてくれないのよぉ」

「仕方ねーなぁ。俺が影で今まで以上に支えてやんよ。だから、心配すんな。な?」

コクンと頷く優の頭をポンポンと撫でた。
ん?
何か視線を感じる。
そう思って後ろを振り返ると貴也がこっちを見ていた。
その目線の先には、俺を見てニコニコしてる優。


やっぱり好きなんだろうな。
アホってめんどくせ。


帰り、俺は貴也に用事を済ませてくるから待ってろと言った。

で、今、貴也と2人で帰っている。


「お前から誘ってくるなんて珍しいじゃん」

ニヤリとしながらいう貴也。
キモッ
いっぺん朽ち果てろ。

「お前声に出してんじゃねーよ!!」

「え?俺の声が美声?知ってるよ♡」

ニコニコしながらいう俺。

「言ってねー!!」

はぁ、本題に入るか。

「貴也。単刀直入に聞くが、お前、優のこと好きだろ」

「へっ……………?」

「図星かぁ(ニヤリ)」

「なんで!?」

「お前っていっつも優ばっか見てるもんなー」

「はぁ…あいつはどうなのかなぁ…」


どうなのかなぁって、おい!
お前普通気づくだろーがー!!
こんのアホ貴也!
何なんだよこの鈍男め!

はーぁ…
心の中で爆発させ心の中で落ち着く俺。
ため息つくのこれで何回目だ…


「なぁ、淳?どうだと思う?」

「えーっと、まぁ、コクって損はないんじゃね?」

もーコクって付き合っちまえよめんどくせぇ。

「でもさぁ、あんな美女落とせねーよ…」

もう言ってしまいたい。
優はお前が好きだと言ってしまいたい…

「お前なら大丈夫なんじゃねーの?優もお前のこと見てる時あるし、今日なんて昼飯誘われたじゃねーか」

「そう言えばあいつ、何で俺を誘ったんだ?」


ぅ…うおぉぉぉぉぉお!
嘘だろ!
嘘だと言え!
いくら何でも鈍すぎるんだよ糞やろー!!!


「俺が思うにはな?淳。優はお前が好きなんじゃねーかな!?」

「は…………?」

「だっていつもお前んとこばっか行くしよぉ」

コイツ、やだ。

「もぅ知らん。コクって振られろアホ。」

「えっ!何でだ!?頼む!助けてくれよ…ってかさ、俺、別に振られてもいいんだよ。ただ、その後優と前みたいに仲良くできなくなるのが怖いんだ…」

貴也…

「お前…………………何純粋ぶってんの?ぷっ」

「淳さん、殴ってもいいですかね??」

「まぁ、お前には俺がいる。安心して告白してこい。このイケメン淳様を信じろ。」

「最後余計だけど、淳かっけーよ!」

ま、一応幼馴染だし?
それに、小さい頃から1人だった俺と一緒にいてくれたのはいつだって貴也だったしな。

金あんのにアパートを出て行かなかったのは、また俺が1人になると思ったからだろう。

ったく、変な奴。



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