イケメン様の隠し事


「ふんっ」



まだ頬が熱い…
最初は俺、めっちゃクールにいこうと思ってたのにコイツ(涼太)のせいでクールでもないしかっこよくもなくなってる……

何なんだよくそー!
何でこんなに調子狂わされてんだ俺!

それに…

「俺は優みたいに可愛くねーのに。容姿は男、性格も男、口は悪いし誰よりもイケメンだ!」


「淳ちゃんは可愛いのに…………それに、優ちゃんと淳ちゃんて、他の女の子みたいな欲はないし、友達大切にするし。友達大切にするのは貴也もだね。僕はね、急に入ってきた僕を輪の中にいさせてくれる淳ちゃんたち3人が大好きなんだ。ま、その中でも淳ちゃんへの好きはまた別だけどね」




すごく綺麗で優しい笑顔がそこにはあった。
俺も……ここにいるメンバーが大好きだ。



いつも俺に酷いこと言われてるのにずっと一緒にいてくれる貴也も、俺にタオルを貸してくれたり、笑顔をむけてくれる優も、内心何考えてるか分からない表情するくせに、実は人のこと考えてる涼太も…


「大好きだ…………」

俺は自然と微笑んでいた。


「淳ちゃん…その顔ずるいよ」

「は?何言って…………むちゅッ」



またか。
またなのか。

何で俺キスされてんの?
こいつキス魔なのか!?

もぉ!!

「モゴッ…」

ふざけんな!って言おうとした瞬間…………

ゆ、優…と、貴也が………

はい。
オチはね、だいたい想像できるよねー。
うん、見られました☆


「お前ら………何…やってんの??」

「じ、淳て…そっち系?」


「や………そそそ、そんなわけ!」

「あたしは別に、そういう……淳のこと避けたりしないから!!自分の気持ちと涼太くんを大切にしてね!」


ななな、何言ってんだこの美人さんはー!!
ってか何で俺だけ言われんの!?


「ちっがーう!!ばっきゃろー!!俺はホモじゃねー!!!」

「だだだ、だって!!男同士で、ききき、キス!!」

「俺は女だっつーのー!!!!!」


……………シーン…………………


「おいっ淳!それ!」

「淳ちゃんダイレクトォ~♪」


目の前には口をはわはわさせてる貴也と、ニコニコしてる涼太。
そして……………


何言ってんだコイツみたいな顔で俺を見る優。


最悪だ…………


自分で暴露してるよ…………


「た、貴也……淳は何を言ったの?」


「ねぇ優ちゃん。」



優が貴也に話かけたと思ったら何故か涼太が口を開いた。


「優ちゃんてさ、ホントは薄々気づいてるんじゃない?淳ちゃんが女の子って。」


「優…そうなの?」


優が気付いてた?



「うぅっ………だ、だって、日常生活において貴也の言動が怪しいし…淳だって何か変だし、声男にしては高いし、美人だし、指細すぎるしさ」


まじかよ………
俺はホントに自惚れてたの?


俺バレてたの?



めっちゃイタイ奴じゃん…………


「じ、淳………大丈夫か?」

「貴也………俺、自惚れてたみたい…」

「………え?」

「たぶん見た目も、そんなに男じゃねーのかな…貴也、よく俺に付き合ってたな………」


「いや、お前女子にキャーキャー騒がれてんだから大丈夫だって」


確かにそうだ。
女子は皆俺が男だと信じきっている。
優は俺らの近くにいたから気付いたのか?



頭が回ってきた…………
とりあえず、謝らなきゃ……


「優………今まで嘘ついててごめんな?」

「うっ…そ、そんな顔して謝られてら許すしかないじゃない!それに、あたしと貴也をくっつけてくれたし、嫌いになんてなれないわよ」



優………


「大好き」

そう言って俺は優を抱きしめる。

「あたしも淳大好きよ!」

抱きしめ返す優。


「何か、貴也より淳ちゃんの方がお似合いなんじゃない?」

涼太がいたずらに笑いながら言った。


「だ、ダメダメダメダメ!!優は俺の!」

「貴也、俺さ、やっぱお前よりイケメンだと思う。」

「そ、そんなの知ってるっつーの!!だから優を返せ!」

「どーしよっかなぁっはは!」

「淳ちゃん!淳ちゃんは僕のでしょ?」

「あら、あなたち付き合ってたの?」

「淳、聞いてねぇぞ!」

「は?誰が誰と付き合ってるって?こんの僕っ子変態バカ王子。」

「思ったんだけどさ、ちょくちょく僕のあだ名変わってるよね」 


んなことしるか。
もー寝る。


俺はテントの中に入った。

「優、俺と同じテントだよな?」

「え…?」

「ん?」



え、やめてくれよ…
このノリでいくと優は貴也と寝ることになるじゃん…

まぁ、ね。うん。
カップルだし?
あるよね、一緒に寝たいとかさ。

でもさ、俺、涼太と一緒に寝るとか無理だよ?
そうなったら意地でも外で過ごすよ?
徹夜で海眺めてられるよ。


「淳…あたし…うーん…」

迷ってるね。
答えは出てるくせに。
この美人さんはバカと寝るんだよね。
俺、切ないな……………


「淳ちゃん、僕のことも考えてくれる?僕、貴也と寝るなんて死んでもゴメンだね。」

きぱっと言い切ったねー。


「なっ!てめぇ!俺だって優と寝る気しかねぇ!!」

「はぁ………もぅいいよ。優と寝ろ。俺、どうなってもいいや……」

「大丈夫だよ淳ちゃん!いきなり襲うなんてしないからね」


目が…輝いてるよ……


「ってか、心配してるのそこじゃないから。抱き枕にされそうで怖いってこと。」

「それは僕には何とも言えないよー」

そのキラッキラな笑顔やめてくれ…
怖いから。

「お前………はぁ…ため息がだんだん増えていくな……」

「じ、じゃぁ淳!あたしたちそろそろ寝るわね」

「あ、あぁ。おやすみ。また明日。」


まぁ、さすがにテント内でバカな貴也でも優に手を出すなんて有り得ないだろ。


「涼太…先寝てて。」

「何で?」



寝ようと思ったけど、もうちょっとこの景色を眺めておこう。
月が綺麗だから…


「俺はもう少し海眺めてから寝るよ」

「じゃぁ僕も、一緒に眺めようかな…」


俺らは海の近くまで行き座って眺めていた。
星も月も、すごく綺麗だ…
つい見とれてしまう。


「淳ちゃん、何かすごく美人に見えるよ!」

なっ……

「頼むからそういうこと真顔で言うのやめてくれ…さすがの俺も恥ずいから…」


たぶん俺の顔は今真っ赤になっていることだろう。







涼太side


星空を見上げる淳ちゃん。
何でかな?
月の明かりが照らしているからか、すごく美人に見える。
まぁ、元から美人なんだけどね。



僕が思ったことを伝えると、いつもはあんなにクールでイケメンな淳ちゃんが頬を赤らめる。

何でこんなに可愛くて、愛おしいんだろう。

細くて小さい体で僕に毒舌を吐く淳ちゃんが毎日愛おしいんだ………



僕を拒否するのに赤くなっている淳ちゃんに、気軽に手なんか出せないよ………



「ねぇ、淳ちゃん」

「ん?」


そう言うと、淳ちゃんは顔をこちらに向け、真っ直ぐ僕の目を見る。


─ドキッ─

あぁ、もぅ、海に沈んでこようかな…………


ふぅっ

「淳ちゃんが僕を好きになってくれる可能性って、あるのかな?」


可能性…
なくてもいいって思いたい。
ただ、淳ちゃんの近くにいられたらそれでいい、そう思いたい。

でも、その考えとは矛盾してて、心は淳ちゃんに鷲掴みにされていた。

ただ、無理っていう確率のほうが、高いのかな……


僕が勝手に落ち込んでいると、淳ちゃんが僕の頬に両手を持ってきた。


「え、ちょ、じっ淳ちゃ……」

バチン!!

痛!!

ひ、引っ叩かれた!?


「淳ちゃん?」


淳ちゃんは俯いていた顔をあげる。


真っ赤だ………


「俺は、いつもニコニコしてて、自分は何考えているかわからない表情するくせに、人の心を簡単に見透かしてくるお前が苦手だった!で、でも、お前は実際、貴也の扱いひどいけど、人をよく見てて、気を利かせるし、優しすぎるぐらいだ。そんなお前を……」


そこで途切れる…
でも、淳ちゃん。
分りやすすぎるよ。

「なぁに?淳ちゃん…」

「きっ…嫌いには…なれない…」


ゴメン淳ちゃん。
少しだけいじわるするね…

可愛すぎる君がいけないよ?


「ねぇ、それは、どういう好きなの?」

「うっ………それ、は……」


僕の頬から手を離そうとする淳ちゃん。
ま、僕が離させるわけないよね☆

僕は淳ちゃんの手首を掴む。


「ちゃんと言わなきゃわからない」

「ざっけんな!誰が言ってやるか!はなっせ!!」

「言うまで離さない」

うぅ…となっている淳ちゃんが可愛くて可愛くてしょうがないよまったく。



「淳ちゃん…下向かないで?こっち向いてよ」

「い、嫌だ…」


僕がキスすると思ってるんだね。
ま、するけどね。

「淳ちゃん…」


何だよ、と顔を上げた淳ちゃんに軽くチュッとする。


「本日3回目のチュー頂きました☆」


そう言った瞬間、僕の左頬に淳ちゃんの右ストレートが綺麗に入った。

鈍い音がしたね、淳ちゃん…………

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