オトナの女
オトナの女


「あ、あの、先輩、頼まれてたの出来上がりました」

未だに慣れない、先輩のデスク。私は必死で緊張を隠しながら、さっき出来あがったばかりの書類を差し出した。

「ああ、悪い」

先輩は、そんな私には目もくれず、ごく普通にそれを受け取ると、またカタカタとキーボードを打ち始める。
視線は、パソコンの画面に釘図けのままで、私は寂しい気持ちでペコリとお辞儀をすると、自分のデスクに戻った。


わかってる。

今は仕事中だって。

だけど、一日中不安になってしまうのは、先輩は経験豊富な人で、今まで沢山の女性とベッドを共にしていたからで……。

そんな先輩が、私とではまるで無縁のような状態なんて、どう見ても、私に原因があるとしか、考えられなかった。

手は繋いでくれるし、キスもしてくれるまでに前進した。だけど、そういう雰囲気になっても、腕枕で終わってしまう。

やっぱり、私に色気がないからかな?

そんな、不安は、日に日に大きく膨らんで、こんな事相談出来る友達もいない私は、ただただ、必死でその気持ちを押さえ付けるしかなかった。






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