あの夏のキミへ
バス停に背を向けて走りだす。

ただ、走って走って走りまくる。

こんな大雨の中傘もささずに全力疾走しているわた

しは周りから変な目で見られていることであろう。

でもいまのわたしにはそんなことどうでもよかっ

た。

パシャッパシャッ

足が地につくたびに水が跳ね、周囲に飛び散る。

靴の中には徐々に水が浸水してきて気持ち悪い。

「ハァッハァッハァッ!!!」

わたしの熱い吐息が次々に空気に溶けていく。

心臓は狂ったようにバクバクと音を立て、呼吸がし辛い。

それに、体が…全身が燃えるように熱い。

そのかわり打ち付ける雨が冷たくてとても気持ちいい。

ブロロロロロッ

不意に横から音がした。

なんの音…?

走りながら横を見ると、バスが追い越していくとこ

ろだった。

やっぱりあの時、バス待っとけばよかったな…。

でも今更後悔しても遅い。

頑張って、走るしかない。

わたしは病院めがけて、ひたすら走った。
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