桜*フレーバー
もう大丈夫だと思ったのに。全然そんなことなかった。


ふらふらとした足取りで、バスルームを出て部屋に戻る。


「も……ダメかも」


そんな弱音を吐いたその時、そばにあったダンボールにつまずく。


「痛っ。もー邪魔。さっさと片づけておけばよかった」


未開封のまま放置していたダンボールに八つ当たりしてしまう。


「これ、なに入ってるんだっけ?」


ガムテープを引き、開封する。


中にあったのは雑貨類。たしかにどれも今すぐに必要なものではなかった。


だけど、一番上に置いていたものに、あたしは手を伸ばす。

それは高校の卒業アルバムだった。


3年1組。

自分のクラスのページを開く。

高校の3年間、太一とはクラスメイトになれなかったんだけど、怜央とは選択科目が一緒だったせいか、3年連続同じクラスだった。

あたし達ってつくづく縁があるんだなって思う。


最初のページには、各自の写真が名前とともに掲載されていた。

まだ卒業して1ヶ月も経っていないのに、なんだかとても懐かしい気分になる。


みんな、元気かな? そう思って、ひとりひとりの名前を指でなぞる。


そして……その指は、“羽鳥怜央”という名前で止まった。


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