桜*フレーバー
怜央は写真を撮られるのがあまり好きではない。

たいてい無愛想な顔して写ってるんだよね。


「もー。もっと愛想よくすればいいのに」


クスクス笑いながらページをめくる。

そこには、授業中、遠足、体育祭、そして文化祭などのスナップ写真が載っていた。


あたしはまたプッと吹きだす。


うちのクラスの文化祭の出し物は、ロミオとジュリエットの劇だった。

ジュリエット役は、なんと怜央だったのだ。

ドレスを着て、ウィッグをつけ、メイクまでされている怜央。

あの時、クラスのみんなで可愛いって絶賛してたけど、本番ギリギリまで「嫌だ。帰る」って抵抗してたっけ。

この写真もまた、ものすごく不機嫌そうな顔してる。


怜央……怜央……。


ポタポタ……って、アルバムの中の彼の顔に涙の粒が落ちる。

もう……ダメだよ。

ひとりで頑張るつもりだったのに、無理みたい。

怜央がそばにいなきゃ嫌だよ。


あたしはスマホを手にし、3日ぶりにその電源を入れた。


そして彼にあて、LINEを送る。


【お願い。助けて…】


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