ツンデレ社長と小心者のあたしと……4
ツンデレ社長と小心者のあたしと……4

今日のあたしは高級ホテルの一室で、動画撮影の臨時スタッフとして働いていた。


新たに立ち上げる新部門の求人向けと、前から人気のある社長のお悩みチャンネル【城田社長に聞け!】の収録である。


初めて撮影の手伝いをした時には、舞台裏ってこんなにシンプルなんだと驚いた。


撮影の機材さえあれば、どこだって簡単に、しかも無料で情報を流すことができる。


そういう時代の最先端にいながらも、最々先端を行こうとする社長にいつも驚かされるのだけど。


「田村アナ送ってきますね」


社長の敏腕マネージャー坂井氏が軽く手を上げると、忙しそうに部屋を出ていった。


有名国立大卒で、頭も相当切れる坂井氏は、社長に言われれば何でもやってしまう人だ。


どんな無理難題も、


「そんな急に出来るわけないじゃないですか」


と言いながら結局こなしてしまうので、良き右腕として信頼が厚い。


遠い昔、社長と同じくらいアグレッシブで肉食系のマネージャーがいたらしいけれど、その人は会社の内部機密を盗んで起業してしまった……。

と、少し前に出版された社長の書籍に書いてあった。


独立自体は、決意をしたなら全力で応援してくれると思う。
けれど、一番信頼していた相手に裏切られての起業は堪えたに違いない。


そういう気持ちを隠さず、全部さらけ出せる社長が私はやっぱり好きなのだ。


考えごとをしながら、機材の片付けをしていた私の肩が急に掴まれた。
その瞬間、いつの間にか社長と二人きりだったことに気付く。


高鳴る胸を抑えながら、そっとその胸に頭を預けると、社長は楽しそうな顔をしてあたしの腕を揉む。


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