愛が冷めないマグカップ



「あゆみ」




「は…はいっ」





名前を呼ばれて返事をすると、道路脇で車が止まる。とくに何もない場所でいきなり停車したものだから、あゆみは少し驚いた。なにか車にトラブルでもあったのだろうか。





「小林部長…?」




見ると、小林部長が運転席からあゆみをじっと見詰めて笑っている。




「あの…、どうかしたんですか…?」




「あゆみ」




「はい…?」




「俺のこと、小林部長って呼ぶのは良いけどさ、お前の名字も小林になっちゃったらどうするわけ?」





「へっ??ど…どうするって…ええっ?!」




「あゆみは、俺の所有物だって言っただろ?」




小林部長はそう言うと、いきなりあゆみの肩を抱き寄せた。

顔と顔の距離は数センチ。


お互いの体温を感じられる距離に、あゆみはどうすればよいのかわからない。




「こ…小林部長っ…あの…」




「いい匂いだな」




「えっ」




小林部長があゆみの髪をふわりと撫でる。

こんなに密着していたら、車の外から誰かに見られたらどうしようとあゆみは咄嗟に考えたけれど、小林部長はそんなことはお構いなしだ。




「あゆみ」





「は…はいっ…っ!」





返事をすると同時に、唇を奪われていた。


腰を抱き寄せられて身動きがとれない。




「んっ…」




小林部長の指先が、あゆみの髪を優しく撫でて、ふっと唇が離れた。




「二回目、だな」




「え…」




「お前があのとき起きてたことぐらい、バレバレだよ」




「…!」





「今日はお互い酔ってもいないし、同意の上だからな。俺には罪はない、だろ?」




「それは…」





「好きだよ、あゆみ」





「えっ!!」











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