生意気なキス
彼にも、隙がなさすぎて疲れる、と言われた。
そんなに私って絡みにくい人間なの?


故意に後輩いびりをする趣味もないし、自分ではそんな自覚もない。

なのに彼氏を疲れさせ、後輩にも怯えられている自分に、軽く嫌気が差す。


接客はこなしても、プライベートは全然だめね......。



「近藤さん。お昼の休憩時間は終わったわよ。
売り場に戻ってもらってもいい?」



何も聞いていなかった振りをして、彼女たちのところに近づき、定食をテーブルに置く。



「はぁい。
あっ、そうだ!
先輩は明日の夜って、予定ありますぅ?」


「明日の夜?
特に予定はないけど、何かあるの?」



近藤さんは素直に席を立ったけれど、思い出したように振り向いて上目使いで私を見る。



「わぁ、良かったぁ。
明日の夜に飲み会があるんですけどぉ、あたしの友達が急にこれなくなっちゃったんです。

それで、先輩にきてもらえたら嬉しいなぁって」


「飲み会なら、私よりも他のお友達を誘った方がいいんじゃない?」



彼女の言う飲み会とは普通の飲み会じゃなくて、きっと男の人もくる合コンのこと。


人数合わせが必要なのかもしれないけど、はたちの彼女の他の友達も若い子ばかりで、場違いな気がするので、やんわりと断る。
< 13 / 29 >

この作品をシェア

pagetop