恐怖へいざなうメールはいかが~from.ミチカ
 そのまま森田は校長室へ引きずるよう連れて行かれ、校長や生活指導の教師にこっぴどく叱られた。両親には当然連絡され、『このままじゃ、ロクな大人にならないぞ!』と脅されもした。
 担任の教師のかたわらに立った老女は、『ごめんなさいね』と何度も頭を下げた。それが、せめてもの救いだった。
 担任の教師は森田が助言したその夜、老女の言うとおり彼に二股をかけられている事を知り、心労で三日間ほど学校を休んだ。だが、一度も謝って来なかった。プライドが許さなかったのだろう。学校で会った時も、気まずそうに目をそらしただけだった。
 彼女の態度は森田のショックに拍車をかけ、人間不信にした。それからは、他人からどんなに優しくされても心を許せなくなった。イジメを受けている人のように、できるだけクラスメイトとは口をきかず、目を合わせないようにした。
 自分のカラに閉じこもった。一人でいるのは寂しかったが、また大ケガをするよりマシだと思った。
 増えた一人の時間は、『いかにして霊をうまく追い払うか』の方法を探す事に費やした。
 霊達は自分の存在に気づいてもらえた事が嬉しいのか、街中だの映画館だの、目が合えば所かまわず寄って来た。だが森田は浄霊するすべを知らないし、知りたいとも思わなかった。浄霊するすべを身につけるには何らかの流派に属し、辛い修行を積んで、高級で力のある霊と契約しなければならないから。
 でも、辛い思いをするのは嫌だし、一歩、間違ってあの世へ連れて行かれるのも嫌だった。だから、しない。自分の身を守るための方法を探す事にだけ、力を注いだ。
 霊をうまく追い払う方法は、インターネットや図書館など、思いつく限りの方法で調べた。霊を信じていない親から浄霊する金はせびれないし、小遣いは少なすぎて、貯まるのに何年かかるかわからない。人と接触するのは嫌だから、バイトもしたくなかった。
 調べた方法の多くは効き目が今ひとつだったが、神は森田をふびんに思ったのか、すごい方法を一つ教えてくれた。自作のお守りを身につけることだった。
 
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