恐怖へいざなうメールはいかが~from.ミチカ
ささやかなプレゼント
「よーし、出来た」
時は戻り、当日、午後五時三十分。自宅の勉強机についていた森田は、出来上がったばかりのお守りを満足そうに眺めた。
 中身は自分が使っている物と同じだが、袋は赤い色のフェルト生地を使い、白い糸で縫った。昨日買えなかったアリウープ!の十巻を本屋で購入した後、二件隣にある百円ショップで調達した。
「今川さん、受け取ってくれるかな…」
しかし、もらってもらいたい相手を思うと、笑顔が曇った。今朝会った時の彼女は森田に対して、ものすごい恨みと怒りの視線を向けていたから。
(直接渡しても受け取ってくれないだろうな。手に取ってもらうためには、僕が送ったという事がわからないようにしなければならない。せめて、今川さんの自宅住所がわかれば、郵便受けとか新聞受けとかに入れられるのに。あー、何か良い方法はないかなぁ)
今朝の再会シーンを思い出し、アレコレ考える。
(まいったなぁ。知っているのって今川さんの下駄箱の位置と、どこのクラスにいるかだけ。机の場所さえ、わからない)
すると突然森田はハッとした。
(下駄箱!下駄箱か!そうか、その手があったか!)
森田は机の上に置いた本棚から数学のノートを取り出すと、使っていないページを開き一枚破いた。メモ用紙のサイズに切れば、ボールペンで何やら書き出した。
 ふと手を止めると、宙を見つめた。
「今日、学校でもシスタードーナツの周りでも、お店の中にも、今川さんの姿を見かけなかったな。また何かあったのかな?…そう言えば、二時間目に救急車が来ていたけど、それに乗るような事件が起きたのかな?)
森田はひどく嫌な予感に襲われた。
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