恐怖へいざなうメールはいかが~from.ミチカ
萎えそうになる気力を奮い立たせ、起きあがった。すると急におなかが『ぐぅー』と鳴った。
(そうだ、まだ朝ご飯食べていなかったんだ!『腹が減っては戦ができぬ』って言うもんな。まずは腹ごしらえするか。おなかがいっぱいになったら、良い案が浮かぶかもしれないし)
作戦を変更し、先に近所にあるコンビニで朝食を調達し食べることにした。何を食べようか考えると、少し落ち込んだ気分が復活した。
 何も考えず、いつものように財布を取り出そうと鞄を開けたとたん、ショックで全身がビクッと震えた。せっかく復活した気分も落ち込んだ。いや、先ほどよりもっと沈んだ。
「あ…あった。な、なんで?」
鞄の一番見やすい場所に、携帯電話が入っていた。まるで昨日の晩、私が入れたかのように。
(そんなハズはない!確かに携帯電話を持ったまま気を失ったもの。目が覚めたら朝だったし、体がものすごく痛かったから、一度も動かず同じ姿勢で寝ていたハズ。…でも鞄の中に入っている。って事は、自分でしまった?)
私は震える手で財布だけ取ると、急いでファスナーを閉めた。このまま鞄ごと、川か海に投げ捨てたかった。
(いや、自分でなんてしまっていない。誰かが私の鞄に入れたんだ。頼みもしないのに入れたんだ!)
いきなり急接近してきた恐怖に頭の中が真っ白になり、さらに激しく体がガタガタ震えた。頭の中に、数日前襲われた黒いモヤをまとった人の顔が浮かべば、また襲われそうな気がした。
(イヤ…イヤ、イヤッ!)
頭を激しく左右に振ると、財布だけもって部屋を飛び出した。店を出る時は防犯のためかならず鍵を閉めるよう言われているのに、やらずにコンビニへ向かって全力で走った。
 しかしすぐに失速した。だんだん走る気力が萎え、気が付けば歩いていた。ボーッとした。コンビニに着いてもボーッとしたままで、紅茶のストレートティーと小包装になったチョコレートだけ買った。パンやおにぎりは買わなかった。さっきの一件ですっかり食欲が失せてしまった。
< 94 / 202 >

この作品をシェア

pagetop