マンガみたいな事が起きました。
「先生って彼女にお土産買ったりするんですかぁ?」
「てか、彼女いるんですかっ?」
「せんせー、はいこれっ!!
あーんして♡」
鹿公園から旅館までのバスの中。
運転手さん側の列の先頭はバスガイドさん。
反対側には渉が座っていて、
周りは女子ばっかり。
……そういうあたしも、
ガイドさんの後ろの席に裕貴くんと座っている。
にしても、ガイドさんも渉のことをチラチラ見て頬染めてるし。
「東雲、さっきから眉間に皺寄ってるぞ~」
裕貴くんにその皺を触られ、
びっくりしていると渉からの視線を感じた。
「東雲、これ食べない?」
「あ、うん…」
気のせいだったかな。
渉は女子の相手で手一杯になっていた。
「はい、あーん」
促されて思わず口を開けると、
ポッキーを裕貴くんに加えさせられていて。
反対側を裕貴くんも加えていて。
裕貴くんがポキッと食べているもんだから、どんどん短くなっていく。
周りの女子は渉に夢中。
「俺のことも見てよ」
目をギュッと瞑っていたあたしにそう言い残し、ポキンと折った。