ここで歌うは君がため〜交わされた約束〜
「懐中時計みたいなものだったら、持ってたけど・・・」
そう、夢の中でいつも首にぶら下がっていた懐中時計、みたいなもの。
「今持ってる?」
「持ってない・・・」
「それはどこにある?」
「えっと・・・わからない」
ベッドの上でオズに抱きしめられていたときにはなかったような・・・。
なにしろ夢だと思っていたから、そこまで気が回っていなかった。
「あのとき母様に邪魔されてしまったけど・・・」
ソファーの上で、テトが身体を詰めてきた。そっと左手を絡められて、真っ直ぐ見つめられる。
「ユノ・・・君と"約束を交わしたい"」
「・・・?」
「好きなんだ」
「っ!」
「私だけのものにしたい・・・」
テトが、私をーーー?
でも、約束を交わすって、どういうことーーー?
「結婚してより深く絆を深めたい男女は、鏡と時計を交換するんだ」
あの物語が風習として残ってるんだ。
「でも、私は時計持ってないし・・・。いつかは元の世界に帰るし・・・。それに、オズの」
「本当の側室じゃないだろう?」
それを言われたら、何も言えなくなる。
「元の世界に帰る方法は一緒に探すよ。それまででいい、僕の正室になってほしい」
正室になったら、この世界に留まりたいと思わせる自信がテトにはあった。
「・・・ごめん、それは」
できない、と言おうとして、ゆのは動きを止めた。
「テト、鏡が・・・」