管狐物語
桜は突然の事に、体を震わせ、文机の引き出しに、目を向ける。
なぜかその声は、机の引き出しから聞こえた気がしたのだ…。
この家には、私しかいないはず…
ふと、おばあちゃんが来てくれたのかとも思ったが、先ほどの声は、男の人のように聞こえた…。
どくん…どくん…
心臓が早鐘を打つ…
震えるほど怖いはずなのに、桜は、ゆっくりと引き出しに手を伸ばしていく。
なっ、なんで⁈
手が勝手にっ‼︎‼︎
すっ…と引き出しがあいた。
恐る恐る中を覗いてみると、古ぼけた筒が5つ入っている。
それぞれに赤文字で「封印」と書かれていた…。
背筋が、ぞくぞくする感覚に、それ以上触れてはいけないような気がした。
-昔から、飯塚家には管狐とよばれる妖が、守護者として…
ふいに、遠い過去から、祖母の声を思い出す。
「…管…狐…」
無意識に、桜の唇から言葉がもれる…。
どくんっ、どくんっ
心臓が痛いほど打ち、桜は目眩をおこしそうになり、畳に足から崩れ落ちる。
ーおばあちゃんも両親から管霊狐とよばれる筒を受け継いだんだけど……
そうだ…
おばあちゃんが昔言っていた、この家を守る狐の入った筒…?
これが、そうなの…?
これが…
震える体は、上手く動かすことが出来なくて、桜は手の力で、机に踏ん張り、管霊狐に触れた。