愛されることの奇跡、愛することの軌跡
『原口先生…いえ、肇(ハジメ)は突然、私に別れを切り出してきたのよ。余りに突然過ぎて、理由を詰め寄っちゃった。でも肇は、"お前に愛される資格はない。俺はひどい人間なんだ"と抽象的な理由ばっかり並べて、とてもじゃないけど納得できなかった』


先生は少しうつむいた。


『私、肇より5つ年上で、肇と釣り合わないのかな、とか、年上なのにしっかりしてない性格が嫌われちゃったのかな、とか。やっぱりいろいろ考えて…私、肇を追いかけてニューヨークに行ったから、彼と別れると、正直ニューヨークにいる意味がなくなっちゃうのよね』


いくら好き合っていても、ただの他人は簡単に別れを選択することが可能なんだ。


どんな事情にせよ、それって寂しい。


しかもニューヨークだし。


『玲奈ちゃん、高校3年生だよね。なら、こんな話をしても問題ないかな。男女ってさ、付き合っていたら絶対その人の心も、そして体も欲しくならない?"プラトニックな関係"とかもあるだろうけど、愛の形ってその人の体を感じることも、欲として出てくると思うの』


先生は天を仰いだ。
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