愛されることの奇跡、愛することの軌跡
「こんな中途半端な技術を独占契約させようとしてたわけ?そんなの、健吾やこのみちゃんの人生を天秤にかける意味がわからないよ」


私も、製本についてはわからないけど、まだその製本技術が実用化に至ってないことは、何となく分かる。


「このみちゃんのお父さんの会社だし、あんまり言うとダメだよね。ごめん」


『いえ、いいんです。父は、本当に頑固で、偉そうに母のことを"のろま"とか"世間知らず"と毎日のように罵って、お手伝いさんみたいな扱い方だし、私に対しても操り人形程度にしか考えてないくらい、勝手にいろいろ決めてきちゃうんです』


「それって、亭主関白とも違うよね。最早、何とかハラスメントだよ。そうだなぁ、世間の常識からずれてるから…モラルハラスメントだよ」


私は家族にそんな扱いされたことはないけど、それが幸せなことなんだなと、少しだけ親に感謝した。


健吾をふと見ると、考え事をしているようだったので、


『先生はこの記事を見てどう思ったんですか?』


陽平が聞く。
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