暗い夜
「ちょっと、場所変えようか」
にやにやしながら、私の腕を握る。
気持ち悪いけど、抵抗もしない。
やっぱり、慣れって怖い。
「君さ、腕冷たいね」
そう言って、腕をぺたぺたと触る。
「え?そうですかね?」
にやにやと気持ち悪い人に私は微笑み、そう返す。
そんなとき。
掴まれていたわけでもなく、自由だった右手がぐいっと引っ張られる。
そして、引っ張った人は走り出した。
「......!」
私も合わせるように走る。
転びたくなんて、ないから。