まほうつかいといぬ



「なに言ってるんだ。おれが言いたかったのは、じつは、おまえが羨ましかったよってこと。ずっとおまえになりたかった。だけど憧れるだけはもうやめた。負けてやんない」

勝負しよう。

「青葉はピアニスト、俺はパイロット。どっちがはやく夢にたどり着けるか」

涙は海に溶けてしまって、だから、青葉は小さく笑った。
それを見て満足気に頷く山下の、悪戯にきらめく瞳。

「それじゃあさ──」


いぬは ちいさなおそらにねがった
もしも ねがいが ひとつだけ
たった ひとつだけでも
かなうとすれば


次の日、山下は学校に来なかった。自主退学、それだけが朝のHRでクラスに伝えられた。彼の行方も退学理由も教師たちは口外しなかった。彼のトモダチは、みんな不満そうに陰口を洩らしていた。
HR の最中、青葉は一人、ずっと空を見上げていた。


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