まほうつかいといぬ



いじわるなまじょからも
こわいびょうきや くろいくもからも
にげてにげて

ようやく にげきって
けれどなにも のこらなかった

からだはうごかない
こえは もうきこえない
おかねもごはんも
なにもかも

なにもかも?

いいえ、ちいさな おそらだけを
かれはしっかり もっていた

あおい ぬの とは
しっていた
だけれどずっとしんじていた

「ああ、おねがい おそらさん
ぼくのねがいをかなえておくれ」
いぬは ちいさなおそらにねがった
もしも ねがいが ひとつだけ
かなうとするのならば

もういちどだけ かれにあわせてください

すると
ちいさなおそらが
おおきくなって
かれのからだを つつみこんだ


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