空の誓い、海との約束
「大丈夫です。必ず」

 力強い声が返ってきた。以前同じ問いを投げかけた時も、リフは多くを問う事無くそう言ってくれた。

 顔を上げると、あの時と同じ優しい瞳が私を見ていた。自然と涙が溢れてきて頬を伝った。

「姫ならきっと出来ます。大丈夫ですよ」

 私はリフの肩に顔をうずめて泣いた。

 甘えるのはこれで最後だ。これからは、彼との約束を果たすため、どんな苦境にも立ち向かっていく。

『二度と会う事の叶わぬ貴方の未来に、幸多からんことを』

 私達の後ろで、古いラジオが古い恋歌を小声で歌っていた。

 幼い時と同じように、リフの大きな手が不安を鎮めてくれる。同時に、今まで抑えていた気持ちが口をついて出てきた。

「なりたかったな……リフのお嫁さんに」

 髪を撫でる彼の手が止まった。

「……姫」

 何か言いかけたリフを遮り、想いが溢れるままに言葉を継ぐ。

「分かってる、分かってるの。どんなに願っても叶わないって。でも、それでも、」

 好きだったの――私がそう口にするより早く、背に回されたリフの腕に力が篭った。

 強い力に一瞬息が止まった。鼓動が重なって聞こえた。

 歌詞が一フレーズ進むより先に、リフは腕を緩めていた。抱き締められたと思ったのは錯覚かと感じるほどの刹那。

 何も言えず、私は海色の瞳を見つめていた。哀しい恋を歌い終えたラジオが口をつぐんだ。

「……ずっと、見守っております。この海で」

 そう言って、リフは微笑んだ。いつもと変わらない、穏やかな笑顔だった。


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