空の誓い、海との約束
過去も未来も
◇ ◇ ◇
「数日後、彼と別れて私達は本国へ戻ったの。港に着くまでの間、波間を照らす下弦の月を船室の窓からずっと見つめていた」
陛下は伏し目がちにゆるゆると想い出を語る。僕はと言えば、胸の真ん中が押し潰されてるみたいに痛くて、相槌を打つのもままならなかった。
「本当のところを言うと、最後までちょっぴり期待していたのよね。彼が、私を連れて何処か遠くへ逃げてくれないかって」
そんな無責任な人じゃ無いって分かっていたのだけれど。
そう言って陛下は笑った。笑顔でいる姿が余計に切なかった。
初めて恋した人との別れ。同じ時を過ごし、思い出を共にした大切な人との別離。言葉には表れていない陛下の切ない思いは、想像に難くない。
すぐそばに居るのに、鼓動を感じるくらいそばにいるのに。どんなに恋焦がれても決して越えられない鋼鉄の壁――身分差。
……どうして?
今まで考えた事もない疑問がわいた。どうしてこの世界には階級差があるんだろう。自ら負った責任ゆえの身分ではなく、自分では選ぶ事の出来ない出自ゆえの身分が。