空の誓い、海との約束
「と言っても、大臣達にとっては家柄や国交が第一なんでしょうけれどね。まあ、その思惑を掻い潜って理想の男性を見つけるのも、一国の主として腕の見せ所かしら」

 本音を軽い冗談に包んで悪戯っぽく口にする。そんな陛下が越えてきた辛さや切なさを考えると息が苦しくて、僕は上手く笑えなかった。

 お互い、立場を選んで生まれてきたんじゃない。陛下がただ王族に生まれたというだけ。恋した相手がジョイの言うところによる賤民に生まれただけ。

 それだけなのに、どうして二人の恋は許されないんだろう。

「……会いに、行かないんですか」

 思わず尋ねた僕に、陛下は驚いた顔をした。それが何だか悔しくて、僕は身を乗り出して言った。

「恋人になるのが叶わなくても、せめて会うくらいは許されていいと僕は思……」

 言ってしまってから自分の失態に気がついた。

『彼はもう……おりません』

 陛下が僕を見るたび哀しそうな表情をするのは、叶わぬ恋に耐えているからじゃない。

 恐らく、彼は――

「会えないの」

 陛下は目を伏せた。

「会いたくても、会えない人なの」

 僕も目を伏せた。軽率な問いを後悔した。

 彼は王宮に居ないのではない。既にこの世界に居ないのだ。


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