空の誓い、海との約束
「まあ、十八も歳が離れていたし。リフにとって私は娘みたいな感じだったのね、きっと」

 僕は曖昧に微笑した。心の中にいる自分が陛下の言葉に首を傾げている。

「戴冠してからの日々は、あっという間だったわ。挫けそうになった時もあった。何もかも投げ出せたらどんなに楽だろうって思った事も一度じゃなかった。でもね」

 ロイヤルブルーの瞳が懐かしそうに細められた。視線の先には、街で会った時も小指に着けていた夕陽色の指輪。

「そんな時、彼との約束が私を支えてくれた。彼の言葉を思い出すたび、まるで彼自身が側にいてくれるみたいに感じてどんな困難にも立ち向かえた」

 陛下は顔を上げた。ティアラにあしらわれた宝石が煌き、虹色の光を散らした。

「この五年、私はあの日の誓いを守る為に走ってきた。そして、生涯そうするつもりよ」

 だから、と言って陛下は僕に微笑みかけた。凛々しい、という形容詞が相応しい笑みだった。

「国の利権の為じゃない。身分が釣り合えば誰でも良い訳じゃない。私は、私と一緒に彼との約束を果たしてくれる男性を探しているの」

 思わず僕は俯いた。招待状を貰った時、どうせ良い血筋の種馬を探してるんだろうと斜に構えていた自分を殴ってやりたくなった。

 陛下の求める条件を満たしていない子どもな自分が堪らなく恥ずかしかった。

 ふっと表情を緩め、ほのかに苦笑して陛下はカップを手にした。

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