空の誓い、海との約束
 彼は貴女を愛していました。貴女を護る為に死を厭わないほど、強く。

「私は海になる事は出来ません。ですが、」

 決然と顔を上げ、僕は言った。

「私は、この国と海を深く愛しておられる陛下を、その御心に宿しておられる想いごと包み込む空になりたく存じます」

 甘い言葉で飾られた定型文のプロポーズを放り出し、僕は自分の正直な気持ちを告げた。

 恐らく、僕の言葉の本当の意味を理解出来るのはダグラスとマリー、そして陛下だけだろう。

 僕は一生、海に居る彼を越えることはできない。であれば、海を見つめている貴女をその想いごと包み込み、後ろから優しく抱き締める空になろう。

 沈黙が痛い。広間は水を打ったように静かだ。

 大臣達は微動だにしない。幼い婚約者の型破りなプロポーズに呆れているのだろうか。

 でも、真実と本心を告げた事に後悔はなかった。僕は真っ直ぐにエミリア様を見上げて返答を待つ。

 つう、と白い頬に光の筋が伝った。

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