空の誓い、海との約束
「……っ」

 顔を覆い、エミリア様は肩を震わせて嗚咽した。老兵が目を伏せる。ハンカチを目に当てるマリーが視界の端に映った。

「陛下」

 泣き止まないエミリア様にダグラスがそっと耳打ちした。

 こみ上げる嗚咽を飲み込み、感情を抑えるために深く息をつき。

 エミリア様は僕に御手を差し出した。僕はその手を取る。震える声で、エミリア様は言った。

「命尽きる時まで、貴方と共に生きて行きたく思います」

 受諾の御言葉。

 どこからともなく拍手がおこった。大臣達が頷きあっている。反対意見は無い。

 認めてもらえたようだ。婚約は無事成立した。

 一気に訪れた安堵感から、一瞬目眩がして倒れそうになった。しかし、為すべき事がまだ残っている。

 僕は立ち上がり、陛下の頬に手を伸ばした。陛下の頬を伝う涙が紅い唇へと流れていく。

 と、陛下はすっと膝を折り、僕を見上げた。驚いている僕に涙目で微笑みかけ、静かに目を瞑る。

 共に生きる貴女に、変わらぬ愛を。

 胸の内で誓いの言葉を囁き、そっと唇を寄せる。

 初めてのキスは、潮風に似た切ない涙の味がした。

 
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