空の誓い、海との約束
「そうだったんだ……」

 ダグラスが『マリーはリフに甘すぎた』と言っていた。その理由は悲しい過去にあったのだ。勿論、マリー本人の優しさもあるだろうけれど。

「リフが本当に私の子だったら良かったのにと何度も思いました。許されない事だと分かっていても、エミリア様への想いを叶えてあげられたらと願いました」

 マリーのエプロンに哀しい雫が幾つも落ちる。いたたまれなくて、僕はマリーの隣に膝を付き、彼女の手をそっと握った。

「マリーは、彼の気持ちを知っていたの?」

「薄々気づいていました。それに、なぜ姫様と共に本国へ戻らないのかと尋ねた時、リフが打ち明けてくれたのです。このまま姫様のお側に居続けたなら、いつか自分はこの想いに耐え切れなくなるかもしれない。それが怖いのだ、と」

 切なそうにマリーは笑んだ。

「そう言った後で『弱音を吐いて申し訳ありません』などと謝ったりして……涙してしまった私を逆に慰めてくれました。どんな残酷な扱いにも耐え抜いた我慢強いあの子が弱音を吐いたのは、それが最初で最後でした……」

 マリーは肩を震わせて泣いた。僕はマリーの手を両手で包んだまま、俯いていた。

 賤民と揶揄される身分でなければ。王位後継者でなければ。そう、身分差さえ無ければ――彼もエミリア様も何度そう思っただろう。

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