空の誓い、海との約束
「お帰りなさい、エミリア様」

 とマリーが言うが早いか、

「シエル……!」

 僕は駆け寄ってきたエミリア様に抱きつかれた。

「え、みりあ、さま?」

 僕は一気に真っ赤になった。僕をきつく抱き締めたままエミリア様はすすり泣く。

 ええと、こういう時ってどうしたらいい? 一応婚約者だし、約束のキスもしちゃったことだし、その、背に手を回して抱き締めても良いんだろうか。

「……ありがとう、シエル」

 混乱している僕の耳元で、彼女は涙声で囁く。

「彼の気持ちを教えてくれて、本当にありがとう……」

 心に痛みが走った。ほんの数秒戸惑った後、僕は静かに目を伏せた。

 ……切なかった。身分ゆえに結ばれなかった二人の恋を思って。

 エミリア様の心に僕が居ない事を感じて。

『貴方が愛した女性を、生涯愛し護り抜きます』

 例え貴女が僕を見ていなくても。それでも僕は、貴女を包む空になろう。

 震える背にそっと手を回し、僕は泣きじゃくるエミリア様を抱き締めた。彼女が泣き止むまでずっと、そのままで居た。


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