空の誓い、海との約束
「シエル殿下。レシュノルティア女王エミリア様の伴侶となられるに際し、貴方には我が国が定める規律を尊守していただきます。異存はありますか」

「ありません」

 はっきりと答える。微かに頷き、ダグラスは続ける。

「同じく、レシュノルティア入国後は、女王陛下並びに我が国の許可無く祖国ペルビアナの地を踏む事を禁じます。異存はありますか」

「ありません」

「同じく、女王陛下並びに我が国の許可無くしては、御家族に対する物を含め、ペルビアナ国との連絡を一切禁じます。異存はありますか」

 父上が眉間に皺を寄せてダグラスを睨んだのを目の端に見ながら、僕は答えた。

「ありません」

「同じく、糸一本に至るまでの何物をも、レシュノルティアへ持ち込む事を禁じます。あわせて、有形無形問わず、ここペルビアナで貴方が有していた一切の財産と権利を放棄していただきます。異存はありますか」

「……まるで囚人みたいね」

 姉達の囁き声がした。僕はダグラスを真っ直ぐに見たまま答える。

「ありません」

 僅かに間を置いて、ダグラスは一番簡潔かつ重い問いを投げかけた。 

「同じく、御自身に関する一切の権利を放棄していただきます。異存はありますか」

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