空の誓い、海との約束
「それだけ傷が深かったんだよ。信じてた人に裏切られた傷がさ」

「傷、ですか?」

「そう、数百年前のね。そのとばっちりを今僕らが受けているって、それだけの事。それに」

 まじまじと僕を見ているアスターに笑いかける。

「アスターがそう思ってくれただけで、僕は十分だよ」

 一瞬うろたえた後、アスターは目を瞬かせた。

「本当に……貴方と言うお方は」

 へへ、と笑って僕はアスターの前に立つ。二年前は見上げていたのに、今ではほぼ同じ目線だ。

「アスター。君には我侭ばっかり言って、一杯一杯迷惑掛けてごめんね。そして、今までありがとう」

 殊勝に感謝した後で、泣き顔を見てやろうと下から見上げてやる。アスターは顔を逸らして苦言を吐いた。

「本当ですよ、シエル様。言う事は聞かないわ、物に当たるわ、暴れて手はつけられないわ。その度に、私が御父上から叱られたんですからね。本当に、迷惑も迷惑、大迷惑掛けられ放題で」

 そこまで言うか、と突っ込もうと思った時。

「……そのシエル様が明日からいらっしゃらないと思うと、張り合いが無くて気が沈みます」

 アスターは赤い眼をしてそんな事を言う。僕は彼の手を握ってもう一度繰り返した。

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