空の誓い、海との約束
 二人は僕を抱き締めたまま、言葉も無く泣き続けた。

 震える声で呼んでくれた僕の名前。ずっと求めていた両親からの抱擁。

 それは、想像していたよりずっと優しくて、温かくて。僕の中の尖った感情がどんどん溶かされていく。

 ああ、きっと。僕は目を伏せて胸中で呟いた。

 きっと、二人は不器用だっただけなんだ。二人は僕を厭わしく思ってはいなかった。

 ただ、僕の瞳の色ゆえに起きた周囲の反応に傷付いていただけ。辛い気持ちゆえに辛辣な言葉を口にしてしまっただけ。

 ただ、愛情を伝えることが苦手だっただけ。ただ、それだけ……。

 僕は父上に縋って泣いた。抱えていたわだかまりも、溜め込んでいた寂しさも、全部涙に変わって流れて行った。

「シエル……」

 居てくれて良かった、とは言ってもらえなかった。誇りに思う、と褒められることもなかった。

 それでも、両親の腕の温かさはどんな言葉よりも雄弁だった。それで十分だった。

 心残りは、もう無い。

「では、行って参ります」

 母上の頬にキスをし、父上と握手を交わし。

 僕は笑顔で祖国に別れを告げた。

 あの日の誓いを、果たすために。


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