空の誓い、海との約束
「何でしょう、父上」

 ソファから二人が立ち上がる気配がした。緊張で脚が震えた。

「シエル」

 母上が僕の名前を呼んだ。返事は出来ない。泣いてしまうから。

 唇を噛んで涙を堪えていると、ふわりとした温もりが僕を背後から包み込んだ。

「シエル……」

 母上は僕を抱き締めて嗚咽する。

「今まで、ごめんなさい……」

 何に対して謝っているのだろう。欲しくないと言った事か、何年も会ってくれなかった事か。

「……ずるいですよ、母上」

 自分の声が震えていた。

「今更謝るなんて、ずるいです」

 堪えきれずに僕の頬を流れた雫が、母上の細い手を濡らす。

「僕は……僕はずっと……」 

 寂しかった。

 その言葉に重なるように、大きな腕が伸びてきて母上ごと僕を抱き締めた。

「父、上……?」

 問いかけに呼応して、低い嗚咽が頭上から落ちてきた。父上が泣いていると理解するまで時間がかかった。

 なぜ、父上が泣くのだろう。二人とも、僕が欲しくなかったはずなのに。

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