空の誓い、海との約束
 女王陛下と踊る事は叶わなくても、せめてそのお姿を見ていたい。

 気付けば僕は他の女性に目もくれず陛下の姿を探していた。

 最初の曲の演奏が終わった時、会場の奥でざわめきが起こった。

 陛下が会場にお越しになったらしく、それぞれが恭しくお辞儀をする。呆けている自分に気付いて僕も慌ててお辞儀する。チビだから見えてないと思うけど。

 さっき僕の噂を聞かせてくれた美丈夫が陛下の前に進み出て一礼した。

「エミリア女王陛下、一曲御相手願えませんか」

 鮮やかな青にも深みのある紺色にも見えるシンプルなドレスに身を包んだ女王陛下は、真白な花のような笑みを湛えて彼に御手を預けた。

 ちくり、と。僕は得体の知れない悔しさに似た痛みを感じた。

 溜息が出そうな美男美女のワルツに誰もが踊るのを止めて見入っている。勿論僕も見惚れていた、彼ではなく陛下に。

 そのせいか、陛下が踊りながら誰かを探していることに気付いた。そして、目が合った気がした――その時、曲が終わった。

 次は自分だとばかりに踊りに誘う男性陣。優雅な仕草でその波をくぐり抜け、事もあろうに女王陛下は僕の前へ歩み寄ってくる。

 ああそうだ、陛下のドレスは城下に望む海の色だ――そんなどうでも良い事に意識が飛ぶほど緊張して固まっている僕の前で、エミリア女王陛下は謁見のときと同じように御手を差し出して微笑まれた。

「私と踊って頂けますか? シエル・リバノティカ王子殿下」


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