空の誓い、海との約束
「……んだよ!」

 突然怒鳴り声が聞こえて、私は立ち止まった。続けて、物がガラガラと倒れる派手な音がした。

「どうやって陛下に取り入ったのか教えてもらいたいぜ、諜報員さんよお」

 どきりとした。思わず物陰に隠れた。

『陛下お抱えの諜報員』

 ランディがリフの事をそう呼んでいたのを思い出した。嫌な予感がした。

「え? 返事ぐらいしたらどうだ?」

 耳を塞ぎたくなる様な、人を殴る音がした。逃げ出そうと思うのに、脚が動かない。

「生きる値打ちもねぇ人殺しが!」

「てめえみたいな罪人が生きてること自体おかしいんだよ」

「汚ねえ賤民の分際で王宮に居るんじゃねぇ!」

「何とか言ってみろよ、ほら!」

 やめて。やめて! 心の中ではそう叫んでいるのに、声にならない。

 殴打と罵倒は延々と続いた。

 恐ろしくて、動けなくて。私は耳を塞ぎながら早くやめてと願うしか出来なかった。



< 51 / 173 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop