空の誓い、海との約束
「ランディ殿」

 怒るでもなく、気分を害した風でもなく。どこまでも感情の篭らない彼の声は怒声よりも怖かった。

「職務執行妨害は御遠慮願います」

 淡々と告げる彼の眼は、薄氷が揺蕩う冷たい冬の海を思わせた。


 どうして、笑わないんだろう。

 どうして、無表情なんだろう。

 彼を見かける度にそう思っていた。

 その理由が少しだけ分かったのは、夏のある日だった。




 私はお庭を散歩していた。というのは口実で、ダグラスの礼儀作法の授業をさぼって遊んでいた。

 綺麗なお花が咲いていた。お母様にプレゼントしようと思って、いくつか摘んだ。

 その先にもっと綺麗な花があった。夢中で摘んでいるうちに、どうやって戻るのか分からないくらい遠くに来てしまっていた。

 近くに、倉庫みたいな建物があった。庭師か誰かが居るだろうと思って、そこに向かってみた。


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