空の誓い、海との約束
「以前、私にしてくださった約束を覚えておいでですか」

「困っている人を一人でも少なくするって、あれ?」

「はい」

 私は大きく頷いた。

「勿論よ。忘れたりなんかしないわ」

 真剣な海色の瞳が私を見ていた。リフは私の目を見つめたまま続けた。

「それは、王族であり為政者となられる姫にしか出来ない約束です。そして、姫はその約束を必ず立派に果たしてくださると私は確信しております。姫ならきっと、踏み付けられるしかない最下層の者にも温かな手を差し伸べてくださると」

「リフ」

「この先何があっても、私はその希望を頼りに生きていけます」

 踏み付けられるしかないという表現に、ランディ達に痛めつけられたリフの姿を思い出した。

 賤民と罵倒されていた事。見殺しにしてごめんと謝る苦しげな声。首筋の怪我。

 きっと、彼は何度も“踏み付けられて”きたのだろう。

「どうか、私との約束を忘れないでください。私の事を忘れても、約束だけは忘れずにいてください」

 リフの声が切実な響きを帯びていた。それは祈りにも似た哀切な嘆願だった。

 私は涙を拭い、海色の瞳を真っ直ぐに見つめて答えた。

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