空の誓い、海との約束
叶わぬ想いが重なる刹那
「えっ……」

 儀式の作法習得だと思っていた私は、ダグラスの言葉に一瞬うろたえた。瞬間、彼の眼が鋭く光った気がした。

「今までは黙認して参りましたが、本来リフは姫と言葉を交わせる身分ではありません。これより後は、それぞれの身分に対して相応の距離を置いた言葉遣いや振る舞いを徹底していただきます」

 明らかに険のある口調に、ダグラスが本当に言いたい事の予測がついた。きっと、彼は私の想いに気づいている。

 私は苦笑して答えた。

「何だ、戴冠後の作法って言うからてっきり儀式の作法だと思ったわ。そんな事なら、遠回しな言い方しないではっきり言ってくれればいいじゃない」

 ダグラスを見上げ、言葉を真っ直ぐに放つ。

「リフを好きになるな、って」

 眉一つ動かさず、ダグラスは無言で私を見据えていた。私は大げさな手振りで想いを否定した。

「嫌だわ、リフを好きになんかなる訳無いじゃない。歳だって親子位離れてるのよ? それに、由緒正しき家系の者を伴侶として娶り世継ぎを興すべしって教えられてきたもの、五つの時からずーっと」

 やんわりと嫌味を込めた嘘に反応せず、ダグラスは厳しい表情を崩さずに私を見ていた。離れなければならない時までは甘えていたいという心を見透かされそうな、鋭い眼だった。

 平静を装い、私は話に終止符を打とうとペンを握りなおす。

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