とろける恋のヴィブラート
「ありがとうございます」


 奏は、外国暮らしが長い割には達筆な文字で書かれたメモをじっと見つめて内科病棟を目指して歩いていた。中庭では入院患者の子どもが笑い声をあげて遊んでいる。


(御堂さん、どうしてここでヴァイオリンを弾こうと思ったのかな……)


 奏は未だかつてない経験に不安を覚えながらも、もう一度メモに記された名前に目を落とした。
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