とろける恋のヴィブラート
(どこまで俺様なんだか……)


 散々悩んだ挙句、奏は伴奏の役目を請け負うことを決め、今朝、何度も書き直したメールを御堂に送信した。御堂にしてはいつもより早い返信に意表を突かれたが、奏はその単調すぎる御堂からのメールを読み返した。


「痛っ!」


 何も考えずに手を台についた瞬間、小指にズキリと痛みが走った。


 昨夜、柴野を振り切ろうとして倒れた時に痛めてしまい、思い出したようにズキズキと痛み始めた。


(こんなの平気! 痛くない!)


 奏は、ぽたぽたと頬を伝って顎先から滴る雫を拭うと、ぼすっとタオルに顔を埋めた――。
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