とろける恋のヴィブラート
「それがまだ……場所も決まってなくて」


「そうか、奏さえよければなにか力になれればいいんだけど……やっぱり明日っていうのがネックだね」


 場所と日時だけまだ書き込めていないチラシの原紙に柴野が目を落とした。


「うーん、ヴァイオリンなら電気系統の設備もいらないし、どこでもできそうなものだけどね」


「どこでも……?」


(ヴァイオリンなら電気系統の設備がいらない……そうだ!!)


 ガタンと音を立てて奏は椅子から立ち上がると、オフィスにいる社員の視線が奏に集中した。


「柴野さん! いい場所見つかりました!」


「え……?」


 ぽかんとしている柴野をよそに、奏は閃いたアイディアに最後の望みをかけた―――。
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