瞳の中の碧い海



棗は
遊びに精を出すようになる。


どうせ自分の人生は
父親の決めた通りに
進んでゆく。


ならばその範囲の中で
快楽のみを
追求しようと思ったからだ。


お金はある。


見た目は
素晴らしく美しい。


多少問題を起こしても
父親の権力で
何とかなることも
もう分かっていた。


生きている実感があまりない。


自分が誰だかわからない。


そんなことがよくあった。


自分は
金の鳥かごの中で暮らす
鳥のようだと
いつも思っていた。




エスカレーター式に
S大の1年生になる頃には
棗は評判のドラ息子。


父親の前でだけ
いい子にしていれば
後は何をしてようが
問題ないのだ。


学校内の
お坊ちゃん、
お嬢さんとの
付き合いだけでは
刺激が足りなくて


学校外の
悪い友達と
遊び歩くようになる。



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