Time memorial~遠くへいる君達に、会いたいと願った~
『あ、ありがとうございます。』




突然軽くなった腕をどうすればいいのか分からずに少し見つめる。




「でも何でこんな重いもの一人で持ってるの?」



階段を上がりながらその人は尋ねる。




『週番なので、資料を取って来いと。これくらいなら一人で出来るかなぁって思って。』




結局助けられているから情けなくなって困った様に笑ってみせる。




「頑張り屋さんなんだね。そういうところは偉いと思うよ。」



『頑張り屋さんとか?!こんなの当たり前ですよ。自分の事は自分でやらなきゃ!』



そう意気込むとその人はニコリと笑った。




「そうだね。でもこういうのはちゃんと手伝って貰った方がいいよ。階段でコケたらそれこそ大怪我だからね。」



『あぅ……そうですよね。すみません。あ、教室すぐそこなんでもう大丈夫ですよ。』



そう言って両手を出すとその人は心配そうに眉を寄せた。



「教室まで持っていこうか?」



『いえいえ!流石にそこまでさせるわけにはいきませんし。噂がたったら嫌でしょう?』



さっきから
何やらチラチラと見られているし


私の教室は廊下の一番奥だからその間にたくさんの視線を浴びることになる。




そこに男女が話をしながら向かって来たら



どうなるだろか。





「…俺はそれでもいいけどね。」



『え?』



ボソッと呟いたその声は

考えに浸っていた私には聞き取れなかった



「いやー。こういう風に助けてくれる相手がいたら君も助かるんじゃないかなぁと思ってね。」




助けてくれる相手?


友達がいるか心配されているのだろうか



『大丈夫ですよ!ちゃんと皆とは仲良しですから!』



「あ、うん。そうだね。じゃーはい。」



本をゆっくり受け取る。




「何かあったらまた声かけて。気を付けてね。」



『はい!ありがとうございました!』



ニコリと笑ってその人はすぐ左の角を曲がった。




あっちって確か2年の教室だよね。

先輩だったんだ。
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