あの日々をもう一度
二章 私と正反対の人
暑い。とにかく暑い。
セーラー服が腕にくっつくほどに汗が出る。
テレビで異常気象、異常気象と何度も言っているがその通りだと凜は改めて思う。
まだ17年しか生きてはいないけれども、日本の夏は昔に比べてどんどん暑くなっている、気がする。『専門家じゃないんだからその辺りはわからないんだけどね。』

ボーッとしながら家へ足をすすめていると
走っている車の前に、黒い塊が飛び出してきた。
いや、塊じゃない。じゃあれは?
『犬!犬だ!!』
あと数メートルで車が来る。
死ぬ…。犬が死ぬ!!!!!

凜は気づいたら道路へ飛び出していた。
あと2メートルで車が…!!
犬を片腕に抱えて反対側の歩道へ凜は転がった。

幸い、犬にも私にも大きな怪我はない。
凜の膝にうっすらと血がにじんでる程度だ。

車が目の前で止まった。
漫画とかでみる車内から怒鳴られるパターンかと思いきや、車内から男性がでてきた。
手足が長く、スラッとしていて整った顔。
チャラチャラしてなくて清楚な人。
私の理想とぴったりだ。

なんて、私が見とれていると…
「だだだだっ…大丈夫?!怪我とかない?!どっか打ってない?!ちゃんと自分の名前言える?!病院行かなくていい?!」
って質問攻め。

人は見かけで判断したらダメだっていうのはこの事だね…。
心配をかけた凜も悪いが、なんとも情けない。心配性なのだろうか?
「大丈夫です。怪我は擦り傷程度で…」
名前まで言ってやろうと口を開いた瞬間遮られた。
「えぇぇえ!擦り傷ってどこ?!はっ!血が出てるじゃんか!どうしよう!」

凜はあきれ果てた。これは演技なのだろうか。それとも天然なのか。天然だとしたらひどすぎる。
こんな大人は見たことがないと思ったとき
「俺の家で手当てしよ!」
彼の口からシラッととんでもないことが出た。

『俺の家で…俺の家で…俺の家で…俺の家で…』

いやいや、こんなパターンの誘拐もあるし。でも、何となく…

この人は安全な人だと思った。
< 2 / 8 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop