誘惑上等!

『悠馬が家に友達連れてくると、いつもみんなわたしの顔みてあからさまにがっかりした顔してたんだよね』


それは女子としては結構しんどい経験だろうに、理沙は『毎回のことだからすぐ慣れた』と以前何の感慨もなさそうな顔で言っていた。


『わたしがブスだろうと美人だろうと無関心で、ただお腹空いたって食べるものねだってきた馬鹿はあんただけだったよ』


そういって意地悪そうな顔で笑った理沙に、本人には言わないでおいたけれど実はそのときだいぶきゅんとしていた。



理沙は自分の前ではよく皮肉っぽいことを口にするけれど、そのツンツンした態度がちょっとだけ頬のふっくらしたかわいらしい丸顔とギャップがあって、大悟は理沙のそんなところにめろめろだった。


あの顔で『レポートの期限明日なんだからしっかりやりなさいよ』とか『そんなに急いで雑に食べないでくれる?』と叱ってもらえると、大家族の末っ子として育った構われたがりな大悟はたまらなくしあわせな気分になった。


最近では理沙にかまってもらうために、わざと「専門必修落としそう」などと叱られるようなネタまで披露したりする。怒り出す寸前の理沙の不機嫌な顔を思い浮かべながら、大悟は目の前にいる山田が引いてることにも気付かずしまりのない笑顔で呟いた。


「キレイっつぅかさぁ。すっげーかわいいんだよ、俺のカノジョは」





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