お向かいさんに恋をして
「さ、さくらちゃんっ!!
秋中さんっ! 起きてっ!
さくらちゃんを離してっ!!」

留奈さんがさっきよりも強めに秋中さんの肩を叩く。

私は……。
力が抜けて、秋中さんの腕のなか。
ぼんやりしていた。

止めたくても止まらない。
涙がどんどん溢れる。

大好きな人に抱きしめられている。
大好きな人にキスされた。

普通なら喜ばしいことだろうに……。

悲しくて悲しくて、突然のことに驚きすぎて、涙が止まらない。

好きな人も恋人も、婚約者も奥さんもいないはずの秋中さん。
だけどゆかりさんには何やら思い入れがあるようだ……。

ぼんやり抱きしめられて涙を流しながら、そんなことを考えていた。

「あーもぅっ! 
さくらちゃん、ちょっと待っててっ!」

秋中さんの肩を揺さぶりまくっていた留奈さんが、言って肩から手を離し、自分の鞄を漁りだした。
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