お向かいさんに恋をして
「鍵……! 
でも勝手に鞄を開けるのも……ねぇ?」

「そ、そこまで頭が回りませんでした……。
どうしよう……」

それはそうだ。
当たり前だけど、部屋の前に着いたからって入れる訳じゃない。

色々衝撃で、そこら辺が抜け落ちていたようだ。
私たちが戸惑っていると、日野さんが秋中さんを担いだまま苦笑いを浮かべた。

「大家さん呼んできて? 現状説明して、鍵を持ってきてもらって」

「は、はいっ!
留奈さんと日野さんっ! 
秋中さんをお願いしますっ!」

私は慌てて階段をかけ降りた。

「おやまぁ……。随分と呑んだねぇ」

珍しいの、と目を細めたおばあさんが秋中さんの部屋の鍵を開けた。

日野さんが部屋に運び、留奈さんは玄関で秋中さんの靴を脱がしていた。
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