お向かいさんに恋をして
私はふと気になったことを口にした。

「秋中さん、その後何か言いかけていませんでしたっけ?」

「そうだっけ?」

留奈さんは首をかしげた。

「そうですよ~。
恋人も好きな人もいないって言った後。

ただ……。って、何か言いかけたんです」

うーん、と留奈さんは首をかしげたまま唸っている。

「あ、わかった!」

唸っていたかと思えば、突然ぽんっと手を打つ留奈さん。

「え、何ですか?」

私はグラスにお茶を注ぎながら尋ねる。

「恋人も好きな人もいないけど、婚約者がいる、とか? 結婚してる、とか?」

「えっ……」

「ちょ、さくらちゃんっ!
お茶お茶っ!」

「あっ!」

留奈さんの言葉に驚いてフリーズした私は、お茶を溢れさせていた。
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