君色ラプソディ
初夏の日差しを一斉に浴びての体育は、若干辛い授業である。
「あっつーい!」
ゼッケンを外した唯は既にゴールインしていた実花の傍に腰を落ろした。
「お疲れ。」
「疲れたー。実花って足速いよね。」
「ちょっと前までね、マラソンしてたからね。」
ああ、なるほど。と唯は納得する。

「速いといえば、」
実花はちらりと視線を横に向けた。
「浅倉くん。」
「シュウ?まぁ、すばしっこそうではあるけど。陸上してる風じゃないよね。」
「サッカーかな、バスケもありえるか。」
そんな事を口にしながら、勘の良い実花は唯に問いかけた。


「唯、何時から浅倉くんと仲良くなったの?」
思わぬ質問と実花の勘の良さに、動揺が隠し切れない。

「実はね…」
唯は保健室での出来事を実花に話した。
その後。
放課後、誰も居なくなった頃を見計らって浅倉愁に話しかけたことがあった。


「あの…浅倉くん。」
「…なんか、用?」
相も変わらずひっかかる言い方ではあったけど。
ぐっと堪えた。
「保健室の里中先生にあたしのこと伝えてくれたの、浅倉くんでしょ?」
「おう。そうだけど。駄目だった?」

やっぱり。

「ううん。ありがと、ってお礼が言いたかっただけ。」
唯はニコリと微笑んだ。

「…あそ。」

浅倉愁が鞄を片手に立ち上がる。
帰ろうとしているのだとわかってばいばいって言おうとした。
「あ、浅倉く―」






「シュウで、いい。」




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