あいしすぎて……
顔も知らない人
(加奈子は白い肢体を捩りながら、顎を天にいななかせ、涎を垂らしながら獣のように喘いだ。みつるは加奈子の華奢な背中の骨一つ一つにキスのシャワーを降らせる)

「…、お、おい、岩瀬!訊いてる?」

「えっ、なんすか?すみません」

「だから、ミラクルガールの原稿出来てるのか?って訊いてるの!クライアントがレイアウト見たいって。お前担当だろうが!締切まだ先だけど、お前仕事おせーから早めにやっとけよ」

わたしは俯き舌をベーっと出し編集長の林を上目遣いに威嚇した。

が、如何せんわたしが話を訊いてないのも悪いが。

副業の官能小説の締切が明後日で頭の中は本業よりもエロ一色。毎日エロい描写を頭で思い描きスマホに打ち込むのが専らの癖。

誰にも知られてないけど、そこそこに売れてる官能小説家【安達りゅう】はわたし。男性か女性かは公表してない。

そのほうが喰いつきがいいから。と担当に言われたから。

あー、でも。
私生活は全く奥手。

彼氏いない歴8年。腐ってるわ……。
原稿を描いていても既に発情しないわたしって。ヤバイレベルかも知れない。

(仕事、仕事!やるぞー)

パソコンと睨めっこのこの本業は風俗雑誌を主としている会社でわたしはデザイナー。

 
デザイナーなんて肩書きはカッコいい。

「絢って何の仕事?」
偶然会う学生時代の友達に『デザイナー』と言うと『わー凄いねー、え!何の?ファッション雑誌か何か?』

と必ず訊いてきて。わたしも調子に乗って『シルバーアクセサリー』とかあり得ない業種の仕事をしてると言っている。

『風俗雑誌』等と口が裂けても言えない……。別に一応営業から来た仕事に対して作成するのは同じ。

だ、が。風俗嬢の醜い醜態からの修正。『2割増細く』『眼をカラコン入れた見たいにして』『付け爪をつけておいて』

と本人が整形しろよ!レベルでの依頼に慣れっこのわたしも嫌気がさす。

だから誰にも仕事のことを話した事はない。

官能小説家もそう。

なぜわたしは人に堂々と胸を張って出来ない仕事をしているのだろうか?

今更ながら自分に虫唾が走る。

しかし風俗嬢か〜。わたしのは無縁。

原稿の中の女のコはモザイクこそはかかっているが、元原稿を知っているわたしは皆女優顔負けの笑顔を振りまき華やいで眼に映る。

男に躰を売る仕事。

きっと自分を捨てなければ出来ないだろうに。

いつもそう訝しみ原稿を作成している。
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